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大阪高等裁判所 昭和35年(く)106号 決定

少年 G

主文

本件抗告はいずれもこれを棄却する。

理由

本件各抗告申立の理由の要旨は、少年はRと本件非行を共にしたのであるが、同人は保護観察所の保護観察に付されたにとどまり、少年に対する処分と均衡を失するのみならず、本件は非行回数も被害も少いし、少年は家庭では従順で明るく、学校へも真面目に通つていたし、少年も後悔しているし、将来父母、姉、近隣の保護司において監督するから、少年を初等少年院に送致した原決定は著しく不当であるからその取消を求めるというのである。

しかし申立人M子は朝鮮人であり、法例第二〇条によれば外国人の親子間の法律関係は父の本国法によるべきものであり、父の本国法である韓国新民法第九〇九条によると未成年の子は家にある父の親権に服するのであつて、同申立人は法定代理人でないことが明らかであるから、本件申立は抗告の手続規定に違反するものである。

申立人Fの申立につき案ずるに、本件記録によると少年は少年調査表記載の本件五回にわたる掏摸を進んで敢てしたものであつて、右Rはこれにつき時にカバーし或は時に盗品を受取つて僅少の協力をしたにとどまるものであつて、両者罪状において格段の差異があるから、処置において異るところもあるも当然であり、又少年はさきに掏摸、傷害の非行があり、児童相談所において訓戒を受け、中学校においても、再三の非行によりその都度説諭を受けたにかかわらず、本件非行に及んだものであり、その性格は附和雷同的で障害の克服力に欠け、又その家庭は両親である申立人両名は貧困にして病弱、兄は受刑中、姉は年少で到底家庭における指導監督は期待できない状況にあるから、少年の健全な育成を期するために、初等少年院に収容して指導訓練を施すのを相当と認めた原決定は適切妥当であるから、その抗告は理由がない。

よつて少年法第三三条第一項により本件抗告はいずれもこれを棄却することとし主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 松村寿伝夫 裁判官 小川武夫 裁判官 柳田俊男)

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